SORANORINGO

詩と日々。

魂の樹

 

魂の樹

いつからそこに生えていたのか

誰も知らない


いつも静かに待っていた

自分の声に気づくものを

 

ある日ひとりの旅人がやってきて

疲れた体をそっとに樹にあずけた

 

魂の樹

旅人の中に

なつかしい光を感じた

 

「この人だったら

私の声が届くかもしれない」

 

陽光に光る葉をそっと揺らし

黄金の調べを奏でてみた

 

旅人は樹に寄り添うように眠っていたが

ふと風の中に永劫の香りを感じ取る

 

旅人は胸が高鳴るのを押さえられずに

竪琴を手に取った

 

旅人は感じるままに竪琴を鳴らしてみた

何かと深く共鳴するのを感じて体が震えた

 

その時村人は

魂の樹が虹色に輝くのを見たという

 

「やっと届いた」

今までの孤独が消え

葉も枝もいのちの輝きを取り戻したようだった

 

それから毎日旅人とともに魂を合わせた

その調べは村全体を金色に輝かせた

 

「やっと私の使命が果たされた

もっともっとみんなに魂の調べを聴いてもらいたい」

 

旅人と魂の樹の調べはたちまち評判になり

山を幾つも超えた遠い村から聴きに来る人もいた

 

ある日、旅人は思った

「僕のこの調べをいろいろな人に聴かせたい」

 

旅人は燃えるような朝焼けに顔を輝かせて旅だった

未来への希望を胸に抱いて

 

旅人が去り、孤独と寂しさに胸が痛んだ

本当はただ友達が欲しかっただけなのかもしれない

 

でもこれでいいだろう

魂の響きは彼に受け継がれたのだから

 

魂の樹

いつからそこに生えていたのか

誰も知らない

 

いつも静かに待っている

自分の声に気づく者を