SORANORINGO

詩と日々。

小さな画廊

陽射しがおだやかに射し込んでいる夢の中の小さな画廊どの絵も作者は違うけれど深くて静かな魂の一体感がある その中の1枚の絵を見ていると私の魂が懐かしく光るのが分かった心のどこかでずっと探していたのかもしれない 夢の中の小さな画廊私の1番大切な場…

魂の樹

魂の樹 いつからそこに生えていたのか 誰も知らない いつも静かに待っていた 自分の声に気づくものを ある日ひとりの旅人がやってきて 疲れた体をそっとに樹にあずけた 魂の樹 旅人の中に なつかしい光を感じた 「この人だったら 私の声が届くかもしれない」…

深い森

深い森の中で 君のことを想ったら やわらかな苔が 燃え立つ赤にそまった 私の心の中には 深く静かな苔色が ひろがった

空の味

空をなつかしく思う時 小さく光った味がする 小さな頃をなつかしく思う時は 甘くしみこむ空の味 空をすくうためのスプーンなんて とっくにないけど 思ってたほどさみしくない 透明な問いから生まれた 小さなスプーンよりも光るもの 手の中で静かに歌いはじめ…

いつもの朝のとなりには 永遠に続く朝がある 小さく光るパンがならび 永遠に響く草原の風が 静かにかなしみを記録する 「朝の境界線に触れると 小さな傷がのこるんだよ」 今日も飛びたがる珈琲を飲みこんで 何も書かれていない文字を追う 永遠に続く朝のとな…

月を甘く抱き込んだ 湖の中に見えたものは 月の蒼い光を受けて 水の中で咲きつづける白い花 きっと夜のしわざなのだろう 今 ひっそりと私の中でも花が咲いた 君を想う度に私の中の夜が息づく

ただ泳ぐだけの時間 ほどけた靴紐にふれると 百合の匂いの旋律が空にこぼれていった 今日もまた ほどけた靴紐だけが残される 夢の音が響いてふりむくような そんなことのくり返し

風と珈琲

風が久しぶりに遊びに来たので 珈琲を淹れる 風の珈琲の好みは 黒砂糖とミントの葉をちょっぴりに 牛乳をたっぷり 私も同じのを飲むことにする 風は楽しそうに たくさんの話をした たとえ同じ話を 何回聞いたって飽きない 風の話はいつだって 世界のにおいが…

詩人

絵の中を 詩人が歩くのを見ていた すこしさみしげで 自由そうな微笑み 詩人と画家との約束は 草原色の雲の上でかわされる

ポケットに入れておいた種をまく 男は体をかがめて ていねいに小さな種をまく 木はぐんぐんと育ち あっという間に未来の先へと伸びていった 男は木を少しだけ切り取って 静かな手の平で 見えない楽器を彫っていく 彫刻家のように 見えない楽器を彫っていく …

音を追いかける

まずギターを手にとる 目を閉じてみる 「聴こえた?」 ううん まだだよ でもなにかが・・・ なにかがちらっと見えた気がしたよ 「どんなもの?」 緑色のガラスを透かしたような光だったよ 「ああ、きっとそれだよ」 うん もう見えないけれど こんな感じだっ…

空の砂

玄関から出ると 靴底をきしきしと鳴らせるもの 空の砂だ 手で拾い集めて瓶に入れる グレーがかった薄い水色 空の砂だからって 特別キレイなものでもない 玄関前には空の砂の瓶がずらりと並ぶ 毎日、砂だらけの手の平を見つめながら考える どうして僕の人生だ…

眠れない夜

眠れない夜は 君の中に静かに響く 木星の音を聴くのです すべての色をつつんだ音が 深く波紋を揺らすのです 音は夜をつやめかせ 闇を銀河の毛布に変えました ふたりで一緒にくるまって そっと眠りについたのです

今夜も小さな星から 木星を見上げる さみしさを すててしまわないように

教会

痛みを光に変えながらひとつひとつ積み上げる エルダーフラワーの丘で透ける優しい歌を聴きながら いつか魂を金色に包むガラスの教会が出来上がる

こんぺいとう

こんぺいとうを 雲の上に投げて 落ちてくるのを待っている こんぺいとう ガラスのおもさで雲の上 小さく息をはいている きっと落ちてはこないだろう そんなことは知ってるよ こんぺいとう もう一度だけ投げて ガラスのおもさで 落ちてくるのを待ってみる

知らない町

カバンの中には 文庫本とかりんとう 紙パックの オレンジジュースを買って飲む 野良猫がやって来て そっと私の影の上に寝ころんだ 少しほこりっぽい頭をなでる 夕暮れが 電車の音をあたためていく

現実の制限があるからこその人間の力でしか出せない魔法 本物の魔法使いも知らない世界を信じるための魔法

きなこのクッキー

遠くても 近くても 透明さは同じ なら この場所で きなこのクッキーを ほおばって 陽射しの庭に出る

オレンジの森

空の余白に オレンジの森 雲が少しふくらみ 夕暮れが光る やわらかな靴で 映画館へと歩いていく

小さな手紙

ふっと言葉が浮かんだら磨く つるつるになるまで磨く 磨き終わると可愛く笑ってくれる まるで人間の手で磨かれるのを待ってたみたい 初めて会えた時はあんなに嬉しかったのに 苦しくても もう暗闇に置き去りにはしない この子達の傍で火を灯してくれてたヒー…

リンゴンベリー

リンゴンベリーの実をひとつ ガラスの中にほうりこむ こわれながらつながって リンゴンベリー そっと光の実になった 草原に散らばるまで あと少し

透明な虹

陽だまりから 色をひろっては 言葉の中へ 陽だまりから 音をひろっては 言葉の中へ 言葉は次第に消えていき 透明な虹ができあがる

魔法

誰かが美しく願ったものはちゃんと世界に現れる仕組み 気付いてほしいなその魔法をかけたのは君だってこと

ガラスのトランペット

君は朝日に輝く雲に音を合わせて ガラスのトランペットを吹く 音色は空を解いていき 空の向こうの澄んだ呼吸が 光となって世界にとけた

小さなとんがり

小さなとんがりが ひとつ これは君に とっておいたもの とんがってるけど つやつやと流れていくもの いろんな音楽が入ってるから静か いろんな色が入ってるから透明 いつか君が探すかもしれない 小さなとんがり

あの頃の私に

望遠鏡を覗いたら 小さな頃の私が見えた 夕暮れの大きな力に 途方に暮れたような顔をしながら UFOカステラを食べていた 大丈夫だよと 言ってやりたいような やれないような あの頃の私の 声にならない問いの答えを 私はいつか笑って答えてやれるのかな 小さ…

透明なファンファーレ

透明なファンファーレを 空に綴じて 音がしずくに変わるのを待った 待つことに ちっとも慣れないんだよ おやすみ おやすみ

新しい歌が帰っていく場所

誰も気づかなかった音 しずかに帰っていった ねむりのうらの草原へ 誰も気づかなかったけど 悲しんではいないみたい 音に金の粉をすべらせて そっと風にたくしたよ 誰も気づかなかった音 音が鳴りはじめる前の音 ガラスのにおいをさせながら 君のとこにも届…