風が久しぶりに遊びに来たので
珈琲を淹れる
風の珈琲の好みは
黒砂糖とミントの葉をちょっぴりに
牛乳をたっぷり
私も同じのを飲むことにする
風は楽しそうに
たくさんの話をした
たとえ同じ話を
何回聞いたって飽きない
風の話はいつだって
世界のにおいがするから
2杯目の珈琲を飲み終える頃
風の姿がだんだんと
夕焼け色に染まりはじめた
それはひとつの合図
風は夕焼け色の声で
珈琲をありがとうと言い
小さく笑った
そしてさよならとも
また来るねとも言わずに
そっと
空へと駆けていった
今ごろはもう
どこかの国のオレンジの木の葉を
揺らしているのかも
カップの底で
ミントの葉があかるく光った